2013年

2月

20日

それでも世界は美しい(佐藤幸子さん)

映像から少しでも何かを感じ取って頂けたら幸いです。

撮影させて頂いているのは、佐藤幸子さん。子どもたちを放射能から守る福島ネットワークの代表を務めています。

幸子さんは故郷の川俣町に夫婦で「やまなみ農場」をつくり、約30年間、自然に寄り添いながら百姓をし(有機農業約10年、自然農約20年)、5人の子どもを育ててきました。

川俣町は飯館村と隣接しており、町の一部(山木屋地区)は避難区域(年間20ミリシーベルト以上)となっています。「やまなみ農場」は避難区域の少し外に位置していますが、放射線量は決して低いとは言えません。

昨年の夏、ねこに餌をやりに帰る幸子さんについて「やまなみ農場」を訪れました。

名前の通り、山に囲まれたところに農場はあります。看板に「自然と共に」とあるように、残された丁寧な暮らしの跡を見て感嘆しました。手造りの家があり、エネルギーの自給を目指して、薪や炭、バイオガス発酵槽まで置かれていました。

養鶏を中心にお米や野菜をつくってきました。平飼いのニワトリから生まれた卵は昔ながらの味がすると好評だったそうです。鶏糞は野菜づくりに活かしました。たくさんつくるには化学肥料や農薬や機械が必要かも知れないけど、自給する分なら有機農業や自然農が合っているそうです。とりわけ自然農は土を耕さず、虫や草を敵としない。命を生かし合うそのやり方は幸子さんの生き方を表しているようにも思えました。

からっぽの鶏小屋と草ぼうぼうの田んぼや畑。それ以外は何も変わらず、木々のざわめきと鳥のさえずりが響き、美しい風景が広がっていました。

幸子さんに事故後のようすを伺いました。

3月13日に子どもたちを山形に避難させました。1986年のチェルノブイリ原発事故の時、もし福島原発で事故が起きたらそうしようと考えていたそうです。

自身は障がい者の共同作業所を運営していることから、後に福島市に留まる選択をしました。障がいを持つ方や高齢の方は避難したくてもなかなかできないのです。

幸子さんは原発事故を火事の現場に例えていました。それは、実体験から来たものでした。子どもの頃、家が火事になり、妹が2階に取り残されてしまいました。その時、お母さんが炎の中を駆け上がって行き、妹を助け出したそうです。まさに母の背中を見て教わったことだったのです。

「火事が起きた時は、まず子どもを逃がさないといけない。火を消すのはその後。家が燃えてしまってもいい。命さえ助かれば。」

事故が起きていなければ、「やまなみ農場」を巣立って行った研修生のもとを訪ねて回り、ゆっくりと過ごしたかったと幸子さん。今ではメッセンジャーとなり、全国を飛び回り、子どもたちを守るための様々な活動をしています。

今回訪れると、夏の時とはようすが変わっていました。それは雪景色になったということではなく、除染作業が始まっていたのです。

家の周りの土が剥ぎ取られ、木は切られて砕かれ、土嚢袋につめられていました。その土やその木、その全ては30年の暮らしの結晶だったはずですが、その全てが「ゴミ」と扱われるようになりました

どれだけの命が、宝が、ゴミに変わってしまったでしょう。除染計画を立てるために調査する地域(年間1ミリシーベルト以上)だけ見ても福島県内に留まらず、広大な範囲に及びます。

そして、その「ゴミ」は今のところ持って行き場がありません。「除染」は「移染」でしかないのです。

現在、仮置場をつくっている状況で、さしあたり道路の脇に置かれたりしています。仮置場への搬入から3年を目処に運び込むという中間貯蔵施設も、その後30年以内に運び込むという最終処分場も、いずれも場所が決まっていません。(国は、中間貯蔵施設は原発周辺を候補地にしているようですが、最終処分場は福島県外につくるとしています。)同様の問題として、原発から出る何万年も残る核のゴミの最終処分場も決まっていないのです。

そもそも、膨大な労力とお金をつぎ込んで行われる除染は必要なのでしょうか。

3.11以前は、国が定めていた法律で、一般人の被ばく限度は「年間1ミリシーベルト」でした。しかし、それを守ろうとすると、ものすごく多くの人たちを避難させなければならず、途方もないお金もかかります。国は命よりもお金を優先させた結果、基準の方を「年間20ミリシーベルト」に引き上げたということだと思います。そして、除染をすれば大丈夫だと言います。除染の方が安くつくと言っても、年間4~5000億円もかけています。(がれきもそうですが、ゼネコンを儲けさせるための公共事業ともとれます。人手不足で地元の農家の人たちも雇われていますが。)

では、この除染の効果について、皆さんはご存知でしょうか。内閣府に設置された閣僚で構成される原子力災害対策本部が掲げた目標では、今年の8月末までに年間被ばく線量を2年前と比べて約50%減少させるとしています。しかし、そのうちの約40%はなんと自然減少(放射性物質の物理的減衰や風雨)によるものであり、除染の効果はたった約10%としています。(学校や公園などの子どもの生活環境は約60%の減少を目指し、除染の効果は約20%としています)。繰り返しますが、何もしなくても自然に約40%減るのだそうです。

今回放出されたセシウムは134と137がだいたい同量と推定されていて、セシウム134の半減期は約2年で、セシウム137は約30年。だから、約2年経つと、だいたいセシウムの半分(134)が半分の力になるので、ざっくり言うと約25%以上は減るということになります。それに加えて風雨でどこかに行くということでしょう。

環境省が出しているとても読みやすい小冊子があるのですが、そこの「除染の目標」というところに「2年前と比べて約50%減少させる」と書いているのですが、自然に約40%減るということをはっきりと書かず、除染の効果をことさらアピールしています。除染だけでなく、被ばくについても「100ミリシーベルト以下では影響が認められない」と安全を強調しています。都合のいいことを選択して載せるので、僕たちに本当のことが伝わりづらくなっているのです。この広告業務を請け負っているのは大手広告代理店の電通や博報堂ということです。

除染に意味がないとは言いませんが、除染の効果がたった約10%しかないのであれば、その費用を賠償にあてるとか、子どもの避難や保養に使ってほしい人も多いと思います。問題はその選択肢がないことだと思います。除染というのは今の世の中を表しているように感じました。表面だけをさらって、あとのことは考えない。

この福島原発事故がもたらしたものを深く見つめていきたい。目に見えないものも想像していこう。そして、命を生かし合える暮らしや社会を目指していきたい。まずは映画づくりに力を注ぎます。応援して頂けたらとても嬉しいです。では、今回はこの辺で。

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映画づくりを応援して下さる皆様に感謝!

祝島と福島と海に生きる人たちを追ったドキュメンタリー「祝福(いのり)の海」

 

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