海を売ってはおりません!

朝から祝島のお母さんの声が海に響き渡る。

中国電力は上関原子力発電所建設に向けて海の埋め立て準備を開始しようとしています。

しかし、未だ原子炉設置の許可も得ていない上、祝島の人たちとの対話もなく半ば強引に進められようとしているのが現状と言えそうです。

今回、中国電力は埋め立て予定地の田ノ浦に浮かべるブイ(工事区域を示す浮標)を運び出そうとしていますが、祝島の人たちは漁船を出してブイの前にバリケードを張ってこれを阻止しています。

 

祝島は山口県南東部、瀬戸内海に浮かぶハート型の小さな島です。

島には古くからの伝統と美しい自然が残っていて、島の人たちは一本釣りやビワの無農薬栽培など、海や山とともに生きてこられました。
最初に訪れた時は、日本にもこんな美しいところがあったんだと驚きでした。
ビワ狩りをしたり、タコのぬめり取りのお手伝いをさせてもらいました。
島の陽気なお母さんたち。自転車で二人乗りをしていたら怒られました。
「二人乗りはダメ!三人乗りにしなさい」って。

のどかなこの島に原子力発電所の建設計画がもち上がったのは1982年でした。
予定地は島の対岸わずか4kmのところです。
島にも原発で働いていた方がいて、その危険性などを説いて回ったこともあり、早くから反対運動が広がったそうです。
その後、地元は中国電力の金のばら撒きにより賛成派、反対派に分断させられました。
8つの漁協に135憶もの補償金が振り込まれましたが、祝島漁協だけがその受け取りを拒否しました。それは命の海を守るという強い思いからでしょう。
現在も島民の約9割が反対しており、毎週月曜日に行われているデモはこの28年間で千回を超えています。

ここ(田名埠頭)には全国から応援にかけつける人(やメッセージ)が集まっています。19日の集会には300人も参加していました。

祝島の人たちがなぜお金も受け取らず、毎日仕事を休んでまで座り込みを続けているのでしょうか。自分の祖父母ぐらいの年代の方たちのそのような姿を見ていると、自分たち若い世代のためにも闘ってくれているという気持ちになり、感謝の気持ちが湧いてきます。

これは祝島や地元だけの問題ではないと思っています。
海や空に境界はありません。原発から出る温排水は瀬戸内海の生態系に影響を与えるでしょうし、扱っている放射能による被害は日本国内に留まるものではありません。

全国から集まった反対署名は30万筆を超えたそうです。
(※追記 2011年8月1日、署名は100万筆を超え、経済産業省に提出されました)

地元の人たちも多くが賛成している訳ではありません。
参考までに、朝日新聞の世論調査結果(2000)を引用すると、
上関町で反対46%、賛成33%、周辺部で反対58%、賛成21%、山口県全体で反対47%、賛成24% となっています。

これらを見る限り、決して世論を反映しているとは思えません。

また、賛成/反対 と簡単に色分けできる問題でもなさそうです。
なぜ賛成なのか、反対なのか、を知ることの方が重要だと思います。

問題だと思っている自分としては、多くの人の関心が集まることを望んでいます。

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ここからは少し原発について考えます。

【原発の問題点】

 

ざっと書いてみます。きれいな海が埋め立てられ、温排水で生態系が壊れ、ウラン採掘などの工程で労働者が被爆の危険にさらされ、使えない劣化ウランは兵器として人を殺傷し放射能を撒き散らし、一度事故が起これば大惨事、原発で出る核のゴミは行き場もなく、核拡散の脅威につながる。

映画「東京原発」 おもしろく専門的なことまで語られていておススメです。

 

【原発がなくても困らない!?】

日本の電力の3分の1は原子力によると言われていますが、どうやらカラクリがあるようです。

 

それは原発をフル稼働させている現状においての話のようです。
稼働率で見た場合、原子力は70.2%、火力は49.5%、水力は20.8%、と原子力が飛びぬけています(2005年)。

これは原発は出力の調節ができないので、一日中(需要がなくとも)常にフルパワーで稼動させなければならないためです。
そして原発は膨大な量の放射能を扱うため、何か少しでも不具合が生じるとすぐに停止させなければなりません。
原発はフル稼働しているか、完全に止まっているかという極めて不安定な電源であるがゆえに、そのバックアップシステムとして原発の設備容量を上回る規模の火力発電設備の建設が不可欠となりました。

火力発電所の設備容量は原子力発電所の約3.6倍です。
(原子力:火力:水力=1:3.6:1)(2005年)
よって火力発電の設備稼働率を70%程度まで増加させれば、たとえ原発が全て停止しても電力供給は可能となります。

現に2007年7月の中越沖地震により、東京電力の柏崎・刈羽の原発(7基)が緊急停止されましたが、首都圏への目立った影響はなかったようです。

(参照「DAYS JAPAN」2008.8 藤田祐幸さんの記事)

 

【原発はCO2を削減しない?】

「原発はCO2を出さないクリーンなエネルギーです」とCMでも有名人を使って大々的に宣伝していますが、CO2を出さないのは発電時のみ、もっと正確に言うと「核分裂では出さない」ということのようです。
JARO(日本広告審査機構)も、2008年11月に電事連のCMに「安全性について十分な説明なしに、発電時に二酸化炭素(CO2)を出さないことだけをとらえて『クリーン』と表現すべきではない」と裁定しています。

実際には、ウランの採掘・精錬から始まり転換・濃縮などの諸工程や、核のゴミの処理に、大量の石油を消費するようです。
(電力会社が出している広告で、原発のCO2排出量が少ないのは、何万年も残る核のゴミに対して、たった50年程の管理しか試算していないというのも理由の一つのようです)

また、上に書いたように、電気出力の変動分は火力に頼るため、CO2削減の効果は期待できないとも言われています。

(追記 参照 : 京都大学原子炉実験所 小出裕章さんの論文

【どうして進められるのか?】

日本は原子力の平和利用を謳っていますが、核兵器を持つ潜在能力を高めたい人たちによって進められるでしょう。

原子力発電所を動かすには莫大なお金がかかります。
例えば、上関原子力発電所の場合、1号機2号機の建設費用は9,000億円と言われています。お金がかかるのは建設時だけではありません。
原発が約50年間稼動した後、廃炉になる時、施設がまるごと放射性廃棄物になります。その処理費用に1兆円かかるとも言われています。

その大金の出所は、私たち一般市民であり、税金や電気料金という形で払わされています。

どうして安全面・経済面で見て割りに合わないと思われる計画が進められるのか疑問に思いますが、それによって儲ける人たちがいれば、全体的に見て損をするとしても、その人たちによって進められるでしょう。

(田中優さんの話では)儲ける仕組みは、ダムや原発などの公共事業の場合、かかった費用の3.8%は事業者の利益として公共料金に上乗せしてよいことになっているようです。(正確には公共事業は地域独占だから、儲けすぎないようにと設定された上限のようです)
かかった費用の3.8%は利益になるので、原発のような大きな事業をすればする程儲けれる訳です。
そのため架空のニーズ(「電力は足りないから増やす」など)を作れば作る程、儲けることができます。

結局、そのツケを払うのは一般市民であって、破壊されるのは自然環境でしょう。

 

 

祝福(いのり)の海」

 

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